AI広告

広告運用にAIを活用する方法|任せる業務・使えるAIツールと人の役割分担

Yuta Watanabe(Founder)読了 約16分
広告運用で媒体のAIが入札とターゲティングを担い、制作のAIと人が役割を分ける様子を表した図解
目次

広告運用にAIを取り入れる動きは、入札やターゲティングの自動化から、コピー・バナー・動画の制作まで広がっています。ただ、どこまでAIに任せ、どこを人が判断するのかが曖昧なまま、ツールだけ増やしてしまうケースも少なくありません。

この記事では、リスティングやSNS広告の運用工程ごとにAIの使いどころを整理し、広告運用で使えるAIツールと媒体のAI機能を種類別に紹介します。そのうえで、とくに効果を実感しやすい広告制作の効率化に焦点を当て、AIと人の役割分担、配信前の確認、導入効果の見方までまとめます。リスティングやSNS広告を運用している方、担当を任されたばかりの方が、自社で何から取り入れるかを判断する材料になることを目指しています。

広告運用でAIが使える工程を整理する

広告運用は大きく、次の4つの工程に分けられます。AIの関わり方は工程ごとに異なります。

工程AIでできること主な担い手
入札・予算配分機械学習による自動入札、予算の自動配分媒体のAI(人は目標設定と監視)
ターゲティング配信先の自動拡張、シグナルに基づく最適化媒体のAI(人は除外設定とデータ設計)
クリエイティブ制作コピー・画像・動画の案出しと量産AIと人の協働
分析・改善数値の要約、改善案の洗い出し人が判断し、AIが補助

入札とターゲティングは、媒体側のAIがすでに広く組み込まれている領域です。一方、クリエイティブ制作は、運用者がAIツールを選んで使い方を設計する余地が大きい領域です。そのため、この記事では後半を制作に割きます。

入札・ターゲティングは「任せる前提」で設計する

自動入札は、データとゴール設定が前提

Google広告のスマート自動入札は、機械学習で膨大なデータを学習し、一人の人物やチームでは扱いきれない多くのパラメータを考慮して入札する仕組みです。ただし、成果を左右するのはコンバージョンデータの質です。Googleのヘルプでは、コンバージョントラッキングの設定後にはアルゴリズムの調整期間が必要だとされています。

SNS広告は自動化ツールの設計が鍵

Metaにも、ターゲティングやクリエイティブ最適化を自動化する「Advantage+」があります。Metaのヘルプでは、広告セットの情報収集期間(学習期間)は、通常、大きな編集から1週間以内に約50件の成果が出ると終わると説明しています。件数が足りない場合は、計測設計や目標の置き方から見直す必要があります。

人が握るべきポイント

  • 何をコンバージョンとして計測するか(計測設計)
  • 目標CPA・目標ROASなどのゴール設定
  • 除外すべき配信先・ブランド毀損リスクの管理
  • 学習期間中に設定を頻繁に変えない判断

この領域は、AIの精度を引き出す入力(データ・目標)を人が整える役割になります。

広告運用で使えるAIツールと媒体のAI機能

広告運用で使うAIは、大きく4種類に分けると整理しやすくなります。すでに広告の管理画面に入っている「媒体のAI」と、運用者が選んで使う「AIツール」です。

広告運用で使うAIの4種類。上の2つは媒体の中にあるAIで、左が入札・配信の最適化、右がクリエイティブのバリエーション生成。下の2つは運用者が選んで使うAIツールで、左が汎用の生成AI、右が動画広告の制作AI
広告運用で使うAIの4種類。上の2つは媒体の中にあるAIで、左が入札・配信の最適化、右がクリエイティブのバリエーション生成。下の2つは運用者が選んで使うAIツールで、左が汎用の生成AI、右が動画広告の制作AI
種類代表例主な役割使いどころ
媒体のAI(入札・配信)Google広告のスマート自動入札、P-MAX入札、配信先、広告の組み合わせの最適化目標とデータを整えて任せる
媒体のAI(クリエイティブ)MetaのAdvantage+ クリエイティブ手元の素材から見せ方のバリエーションを生成・強化素材の見せ方を配信面ごとに広げる
汎用の生成AIChatGPT、Claude、Geminiなど訴求案やコピーの案出し、数値の要約、改善案の整理企画と振り返りを速くする
動画広告の制作AI生成型、アバター型、テンプレート編集型、広告特化型動画素材や広告動画の制作制作が追いつかない状態を解消する

媒体のAI(入札・配信):Google広告のP-MAX

P-MAXは、Googleのヘルプによると、1つのキャンペーンから、YouTube、ディスプレイ、検索、Discover、Gmail、マップなど、Google広告のすべての配信先に広告を出せる、目標ベースのキャンペーンです。どこに、どの組み合わせで出すかの最適化はGoogleのAIが担い、人は目標・計測・素材を用意します。

媒体のAI(クリエイティブ):MetaのAdvantage+ クリエイティブ

Metaの公式ページによると、Advantage+ クリエイティブは、AIを使ってシングル画像・動画・カルーセルの広告のバリエーションを生成・強化する機能です。一部の強化は最初からオンになっていることがあり、いつでもオフにできます。公開前にプレビューで確認するのが前提です。

汎用の生成AI:企画と振り返りを速くする

ChatGPTやClaudeなどの汎用の生成AIは、LPやお客様の声を読ませて訴求案を広げる、配信結果を要約して次の仮説を出す、といった「考える作業」の下ごしらえに向いています。ただし、もっともらしい数字や実績を作ってしまうことがあるため、事実は必ず元の資料で確かめます。

動画広告の制作AI:制作のボトルネックを解消する

媒体のAIは、手元にある素材を最適化するのは得意ですが、素材そのものの中身(どの訴求で、どんな台本の動画にするか)は広告主が用意する必要があります。とくに動画は制作の手間が大きく、本数が増やせない原因になりがちです。動画広告の制作AIの種類と選び方は、動画作成AIおすすめ9選|無料で使えるか・広告での選び方で詳しく比べています。

選ぶときは、まず媒体のAIが力を出せる状態(計測と目標)を整え、そのうえで、媒体のAIが担わない「素材の中身づくり」をAIツールで補う、という順番がおすすめです。

広告制作(コピー・バナー・動画)にAIを使うメリット

制作工程は、AIで時間を短縮しやすく、効果検証のサイクルも速められる領域です。広告は、必要な品質と、判断できるだけの配信量を確保したうえで、違う仮説を試せる回数が増えるほど勝ちパターンを探しやすくなるため、制作がボトルネックになっているチームほどAIの恩恵を受けやすくなります。

コピー

見出し・説明文の案出しや、訴求軸ごとの言い換えが得意な領域です。媒体側にも生成機能があり、たとえばGoogle広告のP-MAXでは、Google AIが広告見出し・説明文・画像を生成できます。ただし、このヘルプは「米国のみ」と明記された機能の説明です。日本で使えるかどうかは、自社のアカウントで確認してください。

バナー(静止画)

構図や背景の違いを複数パターン作る用途に向いています。Googleは、生成された画像の扱いについてヘルプで案内しています。使う前に最新の条件を確認しましょう。

動画

外注では時間とコストがかかりやすく、本数を増やしにくい領域です。台本・映像・ナレーション・編集をAIで一貫して作れるようになると、制作のハードルが大きく下がります。次の章で触れる役割分担と、配信前の確認をあわせて設計することが大切です。

AIと人の役割分担:任せる工程と判断する工程

広告制作でAIと人をどう分けるかの、基本の考え方です。

広告運用でのAIと人の役割分担。企画・制作・入稿前の確認・配信と分析の4工程で、上の段のAIは量を出す作業を、下の段の人は責任を伴う判断を担う
広告運用でのAIと人の役割分担。企画・制作・入稿前の確認・配信と分析の4工程で、上の段のAIは量を出す作業を、下の段の人は責任を伴う判断を担う
工程AIに任せやすい人が判断する
企画・訴求設計訴求軸の候補出し、競合表現の整理誰にどんな価値を約束するかの決定
制作コピー・画像・動画の案出しと量産、リサイズブランドらしさの調整、最終の表現決定
入稿前確認表記ゆれ・誤字の一次チェック事実確認、媒体ポリシー、法令・表示ルールの判断
配信・分析数値集計、パターン別の比較成果の解釈、次の仮説の決定

要点は、「量を出す作業」はAIに寄せ、「責任を伴う判断」は人が持つことです。AIは案を速く大量に出せますが、その案が自社のブランド・事実・媒体ルールに合っているかを保証してくれるわけではありません。

自社の運用で、AIに任せている工程と人が判断している工程はそれぞれどこか。上の表を自社の実態に置き換えて整理することから始めてください。

当社(株式会社zokujin)代表の所感です。当社では、訴求案・台本・映像・編集の下ごしらえといった量を出す作業をAIに寄せ、どの訴求で勝負するか、表現が広告として通用する品質か、事実や媒体ルールに合っているかの判断を人が持つようにしています。映像の綺麗さだけでは広告に使えず、映像・台本・編集・演出の組み合わせ全体の品質を人が見ることが重要だと考えています。

配信前に確認すべきこと:ブランド・ポリシー・事実

AIで作った広告は、人が作った広告と同じ基準で審査・確認します。とくに次の4点は、配信前チェックに組み込んでおくと安心です。

1. ブランド表現

トーン、禁止ワード、ロゴ・色の使い方がガイドラインに合っているか。AIは一般的な表現に寄りがちなので、自社らしさが薄れていないかを人が見ます。

2. 事実確認と誇大表現

価格、効果、実績、期間などの記述が事実と一致しているか。Google広告では、実際より誇張・強調した訴求が「不実表示」に当たり、配信停止やアカウント停止につながる可能性があると解説されています。AIが生成した文言でも、責任は広告主にあります。

3. 媒体の広告ポリシーとAI表示ルール

媒体ごとにAI生成コンテンツの扱いが異なります。Google広告のヘルプでは、EU・インド・ニューヨークのAI規制により、一部のAI生成・編集アセットを含む広告には開示やラベルが必要と案内されています。Metaのヘルプでは、Metaの生成AI機能で画像や動画を作ったり大きく編集したりした広告や、ほかのAIツールで作ったと検知された広告には、「AI情報」のラベルが自動で付くと案内しています。仕様は更新されるため、運用開始前に各媒体の最新ヘルプで確認してください。

4. 実在の人物・権利まわり

AIアバターや生成映像が、実在の人物や他社の表現に似ていないか。素材や音源の利用条件を満たしているかも、あわせて確認します。

AIで作った広告コピー・バナー・動画を配信する前に、どのような確認を行っているか。上の4点をベースに、自社のチェックリストと承認フロー(誰が・どの順で見るか)を決めておくと、運用が属人化しません。

導入前後で何が変わったか:受託案件での実数

効果を判断するには、導入前後で「制作時間」「本数」「成果指標(CPA・CVRなど)」を比べるのが基本です。当社は動画広告AI「Zidea」を提供するほか、広告の制作と運用の受託もしています。ここでは、自社で受託している案件で、Zideaを使う前と後を比べた数値を紹介します。

成果指標(自社受託案件・Meta広告で月約560万円を配信した約3か月の運用・週次改善)

指標導入前導入後変化
CPA¥24,000¥14,800-38%
CVR1.8%2.6%+44%
ROAS--+92%(制作費込み。制作費を除くと+62%)

広告費が同じなら、CV数は月約230件から約380件に増えた計算です(広告費とCPAから出した目安)。

制作の効率(受託案件での前後比較)

項目導入前導入後
1本の制作時間約8時間約30分
同じ費用で検証できる本数1本約20本

導入前は、インターンがリサーチから台本を書き、編集やときどきの撮影、過去の素材から使えるものを探す作業までこなして、1日に2本が限界でした。制作時間は、受託している複数の案件をならしたおおよその目安です。検証できる本数は、撮影して作っていたために費用の面で1本ずつしか比べられなかった同じ受託案件で、AIに切り替えて同じ費用のまま約20本を試せるようになったものです。

制作が速く安くなると、同じ予算でも検証できる本数が増え、勝ちパターンを見つけやすくなります。ただし、この結果は当社の1つの受託案件の商材・予算・媒体での事例です。自社で導入する場合は、まず小さく試して、同じ指標で前後比較してください。

動画の制作が詰まっているなら:広告特化型のAIに量を任せる

動画広告の制作ツールには、生成型、アバター型、テンプレート編集型、広告特化型などのタイプがあります。前の章の数字は、このうち広告特化型にあたる、当社が提供している動画広告AIのZideaで作った広告のものです。

役割分担の表に当てはめると、Zideaが受け持つのは「量を出す作業」の側です。

  • 企画・訴求設計:商品のLPのURLを入れると、AIがLPを読み込み、訴求軸の候補と台本・絵コンテを作ります
  • 制作:AIアバター、映像、ナレーション、テロップ、効果音やモーションなどの演出までを1つのツールで作り、訴求違いのパターンもまとめてそろえます
  • 配信・分析:配信から分析、改善までのループを、同じ流れで回せます

どの訴求で勝負するか、表現が事実や媒体のルールに合っているかは、これまでどおり人が判断します。そのためにZideaでは、URLから自動で作って終わりにせず、台本・映像・テロップ・演出を自分で細かく直せるようにしています。次の章の「小さく試す」から始めるなら、月額9,800円で約5本作れるLightプランが入り口になります。

試すには無料アカウントの作成が必要です。新規登録すると絵コンテを1本無料で作れます。動画は7日間の無料トライアルがあります。

自社で何から取り入れるか:導入の進め方

AIの活用範囲は広いため、一度にすべてを変えず、次の順で進めるのが現実的です。

  1. 現状の棚卸し:入札・ターゲティング・制作・分析の各工程で、すでにAIが使われている部分と人が手作業している部分を書き出す
  2. ボトルネックの特定:制作が追いつかない、検証本数が少ないなど、成果の詰まりを見つける
  3. 小さく試す:1媒体・1商材など範囲を絞り、制作時間・本数・CPA・CVRを導入前後で記録する
  4. 確認フローを先に決める:ブランド・事実・媒体ポリシーのチェック項目と承認者を決めてから量産する
  5. 役割分担を見直す:結果を見て、AIに任せる範囲を段階的に広げる

計測設計とコンバージョンデータの整備は、入札・ターゲティングのAIを活かす土台にもなります。制作の量産と並行して、早めに整えておきましょう。

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まとめ

  • 入札とターゲティングは媒体のAIに任せる範囲が広く、人は計測設計・目標設定・除外設定を担う
  • 使うAIは、媒体のAI(入札・配信/クリエイティブ)、汎用の生成AI、動画広告の制作AIの4種類で整理する
  • 広告制作は、AIで量産と検証のスピードを上げやすい領域で、導入の入り口になりやすい
  • 「量を出す作業」はAIに、「事実・ブランド・ポリシーの判断」は人に、と分けるのが基本
  • 導入効果は、制作時間・本数・CPA・CVRを導入前後で同じ指標で比べて判断する

まずは、自社でAIに任せている工程と、人が判断している工程を書き出すところから始めてみてください。

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